こんな軽い本に中身があるとは思えなかった、ページを開けてみるまでは・・・

2020年5月5日


こんにちは。エンリケです。
「水陸空両用戦能力」の意義をわかりやすく理解できるから、在沖米国海兵隊が理解できる。在沖米国海兵隊が理解できるから、オスプレイの意味が理解できる。
わが防衛戦略の中で水陸両用戦はどう位置づけられるか?がわかるから、日米同盟でオスプレイがどういう意味を持つかがわかる。
「わが防衛・安保にとっての「オスプレイ」配備の意味」がこれほど分かりやすくつかめる書はない。
海兵隊とオスプレイ
本著紹介にあたって、改めて目を通していただきたい一文があるので紹介します。
前政権の某首相が、2009年(平成21年)に在沖米軍部隊のグアム移設を口にしたことがあります。この考え方への強い警戒を訴えるため弊メルマガは当時、専門家の意見をお伝えしました。
以下は、その際いただいた投稿文(書き手は、元陸将 元東北方面総監 洗堯さん)です。本著の理解につながる重要な指摘があります。
■配信日:2009年12月7日 http://okigunnji.com/?p=1355
<小生は、普天間問題に関しては細部にわたる具体的内容を承知しておりませんが、これを考えるにあたっての重要な視点は次のようなことであると考えております。
▼海兵隊という軍種の特質
第1は、海兵隊という軍種の特質をよく理解しておかなければ、普天間問題を本質的に理解できないということです。
まず海兵隊は独立した統合部隊(*)ですが、戦力の中核は陸上戦力です。
(*)陸上・海上・航空戦力を一元指揮する部隊のこと
海空戦力は戦力を他の地域から戦場に迅速に投入しやすいという特性がありますが、これは逆に見れば撤収も容易ということです。陸上戦力は戦闘に最後の結を与え得る戦力ですが遠距離に迅速な展開・投入がし難い戦力です。逆に一度投入されれば簡単に退けません。
従ってどのような国も海外に陸上戦力を投入・展開することには慎重にならざるを得ません。これを又逆に見れば、ある国が海外のある地域に陸上戦力を投入・展開するということは、その地域に腰を据えてコミットする、戦争になれば及び腰でなく徹底的に戦うという意思表示をすることになります。
これは対抗する勢力に対しては一番重みのある抑止力になります。
米国陸軍は日本には第一線戦闘部隊を駐屯させていません。従って現時点では海兵隊が米軍の日本駐留部隊の中で最も抑止力を発揮する部隊になります。
まさに中国の脅威にさらされている日本の南西諸島の核心である沖縄に海兵隊の陸上戦力が展開しているということは、日本にとっては、この地域で紛争が起れば米国が腰を据えて介入するという保証です。海兵隊が東南アジアや中東に展開するのに、沖縄の方が日本本土より近くて有利等ということは、日本にとっては重要なことではありません。
従って、日本の国益から考えて、沖縄を含む南西諸島地域に対する中国等の脅威を排除するための抑止力を維持するためには、米国が他に移したいと言っても絶対に反対し残すべき戦力です。
軍事専門家としての私見ですが、この抑止力の重要性は一部の沖縄県民の迷惑等という問題をはるかに超えています。全国民に影響する国益に関する事項です。
従って現在の政治に責任を有する政府から県外移設の話が出るのは狂気の沙汰であり、そのような軍事音痴集団に政権を任せては日本は滅びると思います。
自民党政権時代に普天間移転問題がクローズアップされたのは、平成7年の沖縄における米兵の少女暴行事件がきっかけであったことを振り返れば、米軍の再配置計画で沖縄に駐留する海兵隊員8千人をグアムに移転させる案に日本政府が反対しにくかったのは理解できますが、この移転計画は日本の国土防衛のための抑止力維持という点では大きなマイナスでした。
しかし辺野古に海兵隊の独自の基地が残れば、情勢が緊迫した際に、海兵隊司令官独自の判断で訓練名目等でグアムから沖縄に地上戦力を展開することは容易です。米軍内部の手続きも簡単でしょう。
逆に海兵隊基地がなければ、空軍等の基地を空けて貰う等の調整が必要で、且つ、共通の上級司令部である太平洋軍司令官の認可を得る必要があり、太平洋軍としての状況判断もありますから簡単ではありません。
従って、政権与党から、抑止力の要である残存海兵隊基地までグアム移転せよとの論が出るのを聞けば、軍事が全く分かっていないと思わざるを得ません。
10月に訪日したゲーツ国防長官は「普天間移設がなければ、海兵隊のグアムへの移転は無い。米議会はグアム関連予算を認めない」と明言したそうです。民主党の普天間見直しが、日本防衛の抑止力維持のために海兵隊をグアムに返さず日本に残すための偽装迂回作戦なら大したものなのですが・・・。
沖縄県民には迷惑かも知れませんが、社民の悪あがきと民主の迷走が、そんな大ヒットにつながれば、中国は顔をしかめ、台湾は安心するでしょうけれど・・・。
▼同盟国としての約束
第2の視点として、普天間を名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部に移設するという施策は、日米両国が長年にわたり多面的に検討し沖縄県民の同意も得た同盟国としての約束であることを忘れてはならないということです。
(*)平成21年度「日本の防衛」(防衛白書)資料38及び41参照 (防衛省ホームページで閲覧可)
オバマ大統領が迅速な実行あるのみという態度をとるのは当然で、鳩山首相の口先でごまかし内容で裏切るという態度は、米国民から見れば明らかな同盟国に対する裏切りに見えるでしょう。日米安保の信頼性を深刻に損ねたという点で、今回の普天間問題の蒸し返しは、政府民主党の軍事・外交・安全保障面での幼稚さを暴露した以上の日本国としての失点であると思います。
▼硫黄島の問題点
硫黄島に移るという点は、色んな問題があります。
抑止力・軍事バランスの変化以外にも、米海軍の空母への離発着訓練(タッチ・アンド・ゴー訓練)場が他に求め得るのか、硫黄島で共用できるのか等の問題があり、それ以前に、硫黄島にまともな米軍基地を作り得るかという問題があります。
米国は、海外に展開する兵士に基本的に本国と同レベルの生活環境を与えることを基本的ポリシーとしています。地積、要する費用、現地の生活インフラの欠除、他の部隊・基地と共用できていた兵站機能等の独立保持による無駄等を考えれば、硫黄島に本格基地を作るくらいなら、沖縄沖に浮かぶ洋上基地を考えた方が良いくらいで、案にもならないと思います。
▼グアムに完全移設したら・・
グアムへの完全移設になれば、既に述べたとおり、日本の防衛に果たす米国の抑止力は大幅に低下します。米国が移設を承知するということは、もう日本の防衛に積極的にコミットする気はありませんよということで、また台湾防衛の可能性も大幅に低下しますから、中国等は狂喜するでしょう。
(軍事評論家 洗 堯 (元陸将 元東北方面総監)>
http://okigunnji.com/?p=1355
■水陸両用戦の入門書
洗さんが「1.」で指摘された点を掘り下げた内容が、本著の中身と言えるかもしれません。
米国海兵隊はひとことでいえば、陸海空すべての戦力から成る統合部隊です。
大きな単位から小さな単位に至るまで、陸海空すべての戦力で組成されている極めて特異な軍隊なんです。その理由は「水陸両用戦」を任務とする軍隊だからです。
ですから、
なぜ、水陸両用戦から「オスプレイ」配備を説明する論がないのか?
なぜ、陸海空の統合部隊である米国海兵隊をわかりやすく解説する本がないのか?
なぜ、本国ではすでに過去の話となったオスプレイを貶める論調にわが国が覆われたのか?
そういう疑問をお持ちのあなたにとりこの本は、砂浜でダイアモンドを
見つけたような興奮をもたらすことになるでしょう。
わが国では「オスプレイ」の宣伝工作は行われていますが
「オスプレイ」の報道は行われていません。
「オスプレイ」を取り上げたメディア・一部専門家は、統合部隊である米国海兵隊への理解がないため、「オスプレイ」への更新の意義が掴めず、頓珍漢な結論しか出せませんでした。
そういう人々にリードされた「反オスプレイ」運動は、明らかに某国の意に沿う宣伝工作となり、わが防衛・安保を害する結果しか生みませんでした。
いっぽう、オスプレイ配備に賛成する人にも、同レベルの頓珍漢な理解しかありません。防衛や安保はカタログデータで達成できるものではありません。
そういう知見しかないと、今後沖縄で本格的に更新配備が進むオスプレイに「何か小さな事故」が起きた際、ふたたびマスコミや一部専門家に振り回されることでしょう。
沖縄をめぐる軍事問題について何より重要なのは、
統合部隊である米国海兵隊の何たるかを正確に理解することです。
オスプレイ理解も、この文脈で進めないと頓珍漢な結論にしか導かれません。
米国海兵隊の理解をするためには、彼らの任務である
「水陸両用戦」への理解が必要不可欠です。
本著はそのレベルから解説をしている他に例を見ない書です。
面倒だからなかなかそこまで手が回らないのが現実だからでしょう。
現時点では、唯一で最高のオスプレイ&米国海兵隊入門書です。
■本著から吸収できるもの
・わが国防衛の欠落点はどこにあるか?
・在日米軍がわが防衛で果たす具体的内容
・片務同盟ではない日米同盟への理解
・水陸両用戦への理解
・きわめて特殊で理解しがたい米国海兵隊を理解するために役立つ知識
・米国海兵隊特有の編成「MAGTAF」について理解できる
・オスプレイは2007年の実戦投入以来、世界各地の戦場で様々な任務を実施してきた経験豊富な軍用機であり、「欠陥機」ではない事実
・オスプレイはなぜ夢の航空機なのか?その理由
・「オスプレイの安全性」を声高に口にする人は、自転車にも車にも電車にも航空機にも船にも乗れなくなる「悪魔の論理」。
・米国海軍公式ガイドブックによるオスプレイの諸元
・海軍・空軍・海兵隊用オスプレイのそれぞれが持つ特質
・在沖米海兵隊は、自衛隊と不可分一体の戦力である事実
・九州、沖縄地域において、日米両空軍の滑走路共有を進める必要性
・在沖米国海兵隊部隊にはどういう部隊があり、どういう任務を負っているかについての理解
・「トモダチ作戦」で水陸両用戦能力の何たるかが発揮された事実
・在沖米海兵隊の米国にとっての意義
・在沖米海兵隊のわが国にとっての意義
・在日米軍の米国にとっての意義
・在日米軍のわが国にとっての意義
・水陸両用戦部隊が、海兵隊部隊と海軍輸送部隊および海空軍戦闘部隊からなる事実。
・タイム誌の記者が海兵隊員から総スカンを食っている理由
・オスプレイはわが防衛・安保にとって必要不可欠という事実
・オスプレイの今後
といったところです。
それではこの水陸両用戦&オスプレイ入門書の内容をみてゆきましょう。
海兵隊とオスプレイ
●目次
編著者まえがき・・・9
はじめに オスプレイはなぜ必要か?・・・・13
第1章 日本の水陸両用戦能力 ーアメリカ海兵隊第3海兵遠征軍ー・・・・・22
 島嶼国家防衛の鉄則・・・・22
 水陸両用能力・・・・・22
 島嶼国家の水陸両用戦能力は防衛力である・・・・28
 人道支援・災害救援と水陸両用戦能力・・・・32
 水陸両用戦能力を欠く日本・・・・35
 「トモダチ作戦」の教訓・・・・37
 水陸両用戦能力の欠落を埋めるアメリカ海兵隊・・・40
第2章 海兵隊の新しい”靴” -MV-22Bオスプレイ-・・・・・46
 緊急展開軍としての海兵隊・・・・46
 MAGTF(マグタフ)・・・・47
 アメリカ海兵隊の機動力・・・・58
 CH-46EからMV-22Bへ・・・・63
 第3海兵遠征軍のオスプレイ配備計画・・・・66
第3章 オスプレイの安全性 -100%安全な航空機はない-・・・・・76
 オスプレイの危険神話・・・・76
 オスプレイの実戦配備・・・・81
 災害救助にも威力を発揮・・・・87
 オスプレイの安全性とは?・・・・93
 安全性か?必要性か?・・・・98
 オスプレイが必要な理由・・・・104
 
 補足:水陸両用戦の類型
第4章 V-22オスプレイ・ガイドブック
    ー米海軍航空システムコマンド編ー・・・・・113
 海兵隊総司令官からのメッセージ・・・・114
 V-22オスプレイの任務・・・・116
 
 1:V-22オスプレイのバリエーションと役割・・・・118
 2:海兵隊のビジョンと戦略・2025年・・・・119
 3:MV-22BとCV-22の作戦記録・・・・122
    アフガニスタン「不朽の自由作戦」2009年11月~現在・・・・123
    水陸両用作戦 海兵遠征隊(MEU)2009年5月~現在・・・125
    水陸両用作戦 「オデッセイの夜明け作戦」2011年3月・・・・・126
    ハイチ「統合対応作戦」2010年1月・・・・128
    「イラクの自由作戦」2007年10月~2009年4月・・・130
    負傷者後送任務・・・・132
    「オスプレイの人命救助作戦」2010年6月・・・・135
    「不朽の自由作戦」負傷者移送作戦(CASEVAC)2010年3月~10月・・・136
    「イラクの自由作戦」2009年7月~11月・・・137
    南方軍「オスプレイの人道支援」2009年6月・・・・139
    多国籍合同軍事演習「フリントロック09」2008年10月~11月・・・140
    救助要請に応答するCV-22・・・142
 4:V-22オスプレイの俗説と現実・・・・143
 5:継続的に改良されるV-22オスプレイ・・・・153
 6:V-22オスプレイの主要データ・・・156
 7:V-22オスプレイの設計の特徴・・・157
 8:アメリカ海兵隊MV-22Bオスプレイの特徴・・・160
 9:アメリカ空軍特殊部隊CV-22オスプレイの特徴・・・・161
10:オスプレイの操縦室と航空電子機器・・・164
11:オスプレイのペイロード・システム・・・・166
12:オスプレイの人員収容と離脱・・・・169
13:オスプレイの自動操縦機能・・・171
資料1:オスプレイの高い生存性・・・172
資料2:オスプレイの艦載適合性・・・176
資料3:オスプレイの開発史・・・178
資料4:CHー46EからMV-22への移行・・・186
資料5:研究と分析ーV-22の優れた能力・・・187
資料6:V-22の作戦能力・・・189
 
いかがですか?オスプレイを知るうえで必要な知識がすべてそろっています。
この本を読み終わるころには、あなたはオスプレイの能力、意義の本質をつかめるだけでなく、水陸両用戦の何たるか、それを具体化する米国海兵隊、そしてオスプレイの実像への理解を通じ、具体的かつ正確な日米同盟と在沖米軍の知識を手にできるでしょう。その知見を元に、巷で伝えられるオスプレイをめぐる報道のおかしさを、指摘できる国民になれるでしょう。
■執筆者紹介
北村淳(きたむら・じゅん)
東京生まれ。東京学芸大学卒業。警視庁公安部勤務後、平成元年に北米に渡る。
戦争発生メカニズムの研究によってブリティッシュ・コロンビア大学でPh.D
(政治社会学博士)取得。”本物(戦うという意味)の軍隊”に入り込んで
フィールドリサーチを実施する経験を持つ数少ない日本人の戦争&平和社会
学者。現在、軍事コンサルタントとしてサンディエゴ在住。日本語著作には
『アメリカ海兵隊のドクトリン』(芙蓉書房出版)『米軍の見た自衛隊の実
力』(宝島社)『グローバル・トレンド2025-変貌する社会』(訳書・
並木書房)『写真で見るトモダチ作戦』(並木書房)などがある。
『海兵隊とオスプレイ

著:北村淳
単行本: 190ページ
出版社: 並木書房 (2012/10/11)
ISBN-10: 4890632956
ISBN-13: 978-4890632954
発売日: 2012/10/11
商品の寸法: 18.8 x 12.8 x 1.4 cm
海兵隊とオスプレイ
(エンリケ)
追伸
「水陸空両用戦能力」の意義をわかりやすく理解できるから、在沖米国海兵隊が理解できる。
在沖米国海兵隊が理解できるから、オスプレイの意味が理解できる。
わが防衛戦略の中で水陸両用戦はどう位置づけられるか?がわかり、結果、日米同盟のなかでオスプレイがどういう意味を持つかがわかる。
「わが防衛・安保にとっての「オスプレイ」配備の意味」をこれほど分かりやすく伝える書はない。
海兵隊とオスプレイ