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普天間基地移転問題–どの側面を重視するのかを明確に認識すべき

time 2009/12/07

あくまでも私見とのご了解をいただきまして一言申し上げます。

普天間基地移転問題には、各種側面がございます。

1 世界戦略上の側面
2 海兵隊運用上の側面
3 日米安保上の側面

が主たる側面かと思います。
それらを順を追って考察してみたいと思います。

1 世界戦略上の側面

この場合、側面というより本質と言うべきでしょう。
米国の世界戦略は、以前のような「世界の警察」としてではなくなり、現在は「米国の国益」を主目的として構築されています。そのため海兵隊は、あくまでも「米国の世界戦略の先兵」として、米国及びその同盟国に重大な損害があるか、またはその恐れがある場合に運用されます。

問題は、同盟国に対しての運用でしょう。
米国だけの国益では「同盟」は成り立ちませんが、一方、「同盟国」に対して過度な加担もまた均衡がとれません。

結論的には、「米国の世界戦略の中で、同盟国の安定が維持される」と考えることになります。

そのため「米国の世界戦略」が、海兵隊運用の基本となるのは当然です。
そして米国の世界戦略における軍事戦略としては、「米国の国益を阻害し、安定を損なう事態が世界の2正面で生じた場合に対処し、安定を回復、維持し得る軍事能力を維持する。」とされています。

従いまして、沖縄駐留の海兵隊は、世界の2正面の不安定事態のうちの1正面を担当することになるのでしょう。

この1正面が、どこになるのか、仮想敵国はどこかが問題です。
「イラン、イラク、アフガニスタン、パレスチナ、中国、北朝鮮、ロシア」でしょう。台湾海峡は、中国問題に含まれていると思われます。欧州、アフリカは、別の海兵隊が対応するのではないでしょうか。

一方、沖縄という「世界地図上の位置」が、これら仮想敵国に対して迅速に展開し得る、最高の位置関係にあることは明白です。フィリピンから米軍が撤退した後の最適地は沖縄になります。

フィリピンから米軍が撤退した直後に中国が、南西沙諸島に軍事基地を建設したことはあまりにも有名です。フィリピン駐留米軍からの抑止力が無くなったためです。

そのためにも、硫黄島、グァム、その他への移転は、米国の世界戦略の迅速な実行という観点では、不適当といえるでしょう。

展開能力が飛躍的に向上した現状を見ましても、やはり「迅速さ」を主要な要素とする海兵隊には、沖縄以外の地は、徐々に抑止力を鈍くすることでしょう。

こうした世界戦略から海兵隊運用構想が策定されているため、沖縄県民の苦情や心情を汲んだとしても、沖縄駐留を変えることは出来ないと思います。

2 海兵隊運用上の側面

海兵隊は、空母、戦闘機、爆撃機、空挺、上陸、等々の機能を有しています。ただ、規模は大きくなく少数精鋭で、「作戦当初の橋頭堡構築」が主任務です。そのため、ヘリ部隊機能のみではなく、多種多様な機能を最高度に利用します。普天間基地には、ヘリ部隊が駐留していて、ヘリによる「急襲」を任務にしていると思われます。

ヘリ部隊運用の場面は多様で、何も上陸作戦主体というわけでもありません。たとえば、ベトナム戦争でも、ヘリ部隊の急襲は、各所で行われました。そして、その訓練には、各種天象地象の場面が要求されます。硫黄島では、その環境が偏っていて、恐らく訓練に偏重を来たすでしょう。その観点では、沖縄県が最高の訓練環境といえるのでしょう。

特に、湿潤な海洋気象と、乾燥気味の大陸気象の混在した極東、中東地域を模した訓練環境は、沖縄が最適です。そして、この海兵隊が、平素の訓練で精鋭を維持してくれることが、米国と日本の安定を阻害する侵略行為への抑止力となっているのです。

さらに、整備、補給の視点でも、沖縄という地は最高の環境です。硫黄島、グァムでは、整備、補給にも時間と手間がかかります。従いまして、普天間基地所在海兵隊は、沖縄という地理的に最高の位置を離れることは考えられないと思います。

3 日米安保上の側面

沖縄県民感情、一部のマスコミの論調では、「海兵隊は、米国の世界戦略のなかで運用され、日本を守る部隊ではない。」と主張しています。

たしかに、日米安保条約第4条には、「・・・日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が・・・。」とあり、「極東」が条約の範囲とされています。
つまり、米国の世界戦略で運用される海兵隊は、「極東」の範囲を超えて運用されます。日米安保条約の範囲を超えるので条約違反と主張しているのです。

しかし、前述したように、世界戦略の中で、安定が維持されるのであれば、それは日米安保の範囲内と考えられるのです。

以上、これら側面の他にも、「有事の信頼性」「政権構成」「参院議員数」「環境」「財政」「住民の安全」、等々の側面があるでしょう。

問題は、どの側面を重視して考えるかです。それによって議論が左右されます。議論する場合は、議論する側面を明確にすることが必要です。これらの側面を混同して議論しても決して結論を見ることはできません。

以上の考察から、海兵隊の沖縄駐留は、米国にも日本にも極東にも、そしてその他の世界にも、その安定維持のための抑止力として有効であると言えます。

結論としては、従前の「日米合意案」どおりに実行することが、日本のためにも、米国のためにも、そして世界のためにも、最も有効な移転策と思われます。

当然そのために沖縄県民の負担が増加するのであれば、その補償はしっかりとしなければなりません。沖縄県民の負担の上に、日本も極東も世界も安定するのですから。

条約の条文を守って締結国が滅びては条約の意味がありません。条文も重要ですが、その趣旨こそが重要です。要は、条約は、その趣旨が有効に機能するよう、その環境をしっかりと整備することが肝要なのです。

枝葉末節の議論に惑わされることなくどの側面を重視するのかを明確に認識すべきでしょう。

(OB-K)

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