不安に思う方向に動く

創刊した二〇〇〇年当時とくらべ、書店の軍事本コーナーは飛躍的に大きくなりま
したね。政治の棚にある解説書や教科書、ミリタリーの棚にある海外軍事の解説書、
兵器解説書や体験記、そして文庫本の棚にも当時は想像できなかった数の軍事本が
並んでいます。
これはひとえに出版関係者のご努力の賜物ですが、背景には国民が抱える国家
安全保障・国防への不安感もあるのでしょうね。
二〇〇一年の9.11テロ、それに先立つ北鮮ミサイルの列島飛び越し、そして
イラク戦争、北鮮の核実験、イスラエルのシリア原子炉空爆・・・思えばこの一〇年
で世界は冷戦構造崩壊後の大変な流動過程に入った感を受けます。
これまであった秩序がなくなり、次がどうなるのか誰にも分からない。
そんな不安が書店の軍事本の品揃えという形で敏感に反映されている気がしま
す。
以前聞いた言葉に
「時代は人々が不安に思う方向へと動いてゆく」
というものがあります。
この言葉は真実のように感じます。
(エンリケ航海王子)
【080512配信 軍事情報第343号より】