石川明人『戦争は人間的な営みである 戦争文化試論』を推薦します(長南政義)

2019年6月15日

石川明人『戦争は人間的な営みである 戦争文化試論』を推薦します

先日、石川明人『戦争は人間的な営みである 戦争文化試論』(並木書房、2012年)を読みました。
石川氏の書籍のメインテーマとなっている「戦争文化」に関する研究は、欧米の軍事史研究では近年人気のある研究分野で、マーチン・ファン・クレフェルト『戦争文化論』(原書房、2010年)など多数の研究書が出されております。
日本でも欧米の研究動向を受けて、学会誌にもちらほらと戦争文化に関する論文が登場するようになったのですが、本書は、日本人が書いた戦争文化論に関する初の本格的単著であり、今後、日本の戦争文化論研究の先駆的業績として読み継がれる良書であるように思われます。
戦争と文化が深い関係性を有するものとして論じられており、宗教と戦争、武器の背後にある文化的側面、なぜ人類が戦争に魅了されるのかなどが説得力に富む論旨で論じられています。
内容も大学の公開講座を書籍化したものであるため、ややもすれば難解となりがちな戦争文化論の書籍としては分かりやすい内容となっており、戦争文化論という学問分野の概要を知る入門書として最適な良書のように思いました。
また、クレフェルト『戦争文化論』とは違った視点で書かれているため、『戦争文化論』をお読みになられたことのある専門の方が読んでも面白く読める内容となっています。今年の読書の秋の最良の伴侶としておすすめできる一冊です。
http://okigunnji.com/1tan/lc/ishikawa1403.html

(ちょうなん・まさよし)

長南政義(ちょうなん まさよし)
戦史研究家。國學院大學法学研究科博士課程前期(法学修士)及び拓殖大学大学院国際協力学研究科安全保障学専攻(安全保障学修士)修了。国会図書館調査及び立法考査局非常勤職員(『新編 靖国神社問題資料集』編纂に関与)、政策研究大学院大学COEオーラルヒストリー・プロジェクト・リサーチ・アシスタントなどを経る。
戦史研究を専門とし、大学院在学中より日本近代史の権威・伊藤隆の研究室で、海軍中将中沢佑などの史料整理の仕事に従事、伊藤隆・季武嘉也編『近現代日本人物史料情報辞典』3巻・4巻(吉川弘文館)で大山巌や黒木為もと(木へんに貞)など陸海軍軍人の項目を多く執筆。また、満洲軍作戦主任参謀を務めた松川敏胤の日誌を発掘し初めて翻刻した。
主要論文に「史料紹介 陸軍大将松川敏胤の手帳および日誌──日露戦争前夜の参謀本部と大正期の日本陸軍──」『國學院大學法政論叢』第30輯(2009年)、「陸軍大将松川敏胤伝 第一部 ──補論 黒溝台会戦と敏胤」『國學院大學法研論叢』第38号(2011年)などがある。
2012年よりメールマガジン「軍事情報」誌上にて、「戦史に見るインテリジョンスの失敗と成功」をテーマにした連載記事を執筆中。
最新刊 『坂の上の雲5つの疑問