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教科書 日本の防衛政策

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わが自衛隊の姿は「戦後日本の国防政策」のなかで形になります。
われわれと軍との関わりも「戦後日本の国防政策」の部分で「自衛隊と政治」
のつながりを通じて行われます。

しかし国防政策・軍事を学んでこなかった政治家は、軍人の言葉に耳を傾けて
も意味を理解できませんでした。その結果、戦後日本の国防政策は、官僚の机
上の空論の世界でこれまで行なわれてきたといえるでしょう。

戦後日本の国防政策を学ぶに当たって、定番となる権威ある教科書もわが国に
は存在しませんでした。

でも、「学ぶための教科書がなかったから仕方ないよね」
といういいわけはもはや許されません。

戦後日本の国防政策の仕組み、歴史、現状、将来が網羅された、
国防政策を学ぶための決定版教科書が、ここに出たのです。


■佐藤退役1佐のあとがき

本著の編集執筆者の一人で参議院議員の佐藤正久退役1佐は、
あとがきでこう述べておられます。

<(前略)この間の我が国の防衛政策の変遷は、あまりにも変化が激しく、
最近のテロ特措法の議論などを見ておりますと、この幅広く、かつ複雑な問題
について、本当の意味で国民の皆様にご理解いただいているのだろうかと疑問
に思わざるを得ません。その原因の一つは、国防に携わるものが、しっかりと
国民の皆様に説明してこなかったということであり、我々自身の責任なのかも
しれません。

そのような問題意識から、陸上自衛隊出身で参議院議員となった今、我が国の
国防政策をより分かりやすく、体系的に整理し、国民の皆様のご理解の一助に
なればとの思いから本書を執筆いたしました。

国防政策や安全保障問題というと、どうしても難解で、多くの書物を見比べな
くては理解できないとのイメージがあるかもしれませんが、本書は、この1冊
あれば、我が国の防衛政策の全体像が理解できる中身になっております。

是非ご愛読いただき、我が国の防衛政策に対する皆様の理解の裾野が広がるこ
とを期待してやみません。>


私が言いたいことは、佐藤退役1佐の言葉に集約されています。
まさにこの言葉どおりの本といえます。

特に、
<多くの書物を見比べなくては理解できないとのイメージがあるかもしれませ
んが、本書は、この1冊あれば、我が国の防衛政策の全体像が理解できる中身
になっております>
は、その言葉どおりです。


■前身は・・


本著の前身となる「教科書・日本の安全保障」という本は、
幅広い「国防政策」の解説をコンパクトにまとめ、総合的な視野からの国防政
策把握を格段に容易にしたものでした。

しかし正直言って「法律の話ばかりでつまらない」という印象を受けざるを
得ませんでした。

これまでの経験から、いくら立派なことがかかれていても、有機的な内容を持
たない本からは、読み手は養分を得られない。とわたしは確信しています。
ですからレビューもしませんでした。


■後継書なんですが

本著はこの「教科書・日本の安全保障」の後継書とされます。

しかし、ひげの隊長こと参議院議員の佐藤正久退役1佐をはじめとする軍人が
編集に参画されたせいか、前著とは比較にならないくらい完成度が上がっていま
す。内容も無味乾燥な法律論議に終わらず、養分を吸収しやすい具体的かつ有
機的な内容です。

図表が多く読みやすい。読んでいて面白い。
それが何よりの証左です。

あわせて、わが自衛隊の歴史、背景、政治とのかかわりをここまで総合的かつ
コンパクトに記述した本を、わたしは知りません

これまでずっと「何故わが国には権威ある自衛隊史が存在しないのだろう?」
と疑問に思ってきましたが、本著は十分その役割を果たすことができるでしょう。

「自衛隊なるものの本質を国民が知るため最も有益な本」といってよいかもし
れません。自衛隊なるものの特殊性を学べる教科書としてもお薦めできます。

それともうひとつ感じるのは、海外諸国との比較がふんだんに出てくることです。
たとえば情報保全に関することでも、これまではおそらく専門家でないと把握
していなかった各国制度の比較があり、大変ありがたいですね。

この点は従来の類書に例を見ない画期的なところで、「そうそう、こういう話
を知りたかったんだよ」と思う箇所に私は多々出会いました。


■概略ですが・・

内容は、大きく分けて四つに分かれます。

第一章では、わが国防の全体像が書かれています。
戦後日本の国防制度の整備、世界の軍事情勢、予算制度、情報に関する知識や
事実が書かれており、政府はどういう形でわが国防を行ってきたのか?そして
行なっているのか?行なおうとしているのか?が分かります。

しかしわが国には憲法九条という稀代のガンがあります。
それから派生した「自衛隊法」にわが自衛隊がいかにがんじがらめにされてい
るか?を知ることができるのが第二章です。

法律論議は退屈です。有機的ではないので眠くなります。しかし本著では、ふ
んだんに歴史的事実を紹介し、具体的事実から法律の意味合いを解きほぐし
てくれます。

九条の存在こそが,わが国防の元凶であることがほんとに良く分かります。

しかし嘆くだけではいけません。
我が国は今そこにある敵、将来出現するであろう敵といつでも戦えるよう備え
なければなりません。第三章は、おそらくあなたが最も関心を持って読むとこ
ろになろうと思います。RMA、NBC兵器対処など、今ここにある危機とそ
れへの取り組みが紹介されています。

とはいえ、なんだかんだいってもわが国防と日米同盟を切り離して考えること
など不可能です。最終章では日米同盟に関する詳細が記されます。

私自身はこの章こそが、本著を他の類書と格の違うレベルに仕上げた緊要点と
考えます。
日米同盟に関連する政策を、ここまで噛み砕いて分かりやすく解説した本は他
にありません。私自身、目からうろこが一番多かったのはこの章でした。

役務協定やACSAなど、言葉はきいたことあるけど意味合いはよく分からない
といったことが、あなたにもたくさんあるのではないでしょうか?
そのほとんどすべてが、ここで解決できるでしょう。

米の軍事戦略を無視して世界の動きは読めないですから、国際情勢に関心を
お持ちの方も、アーミテージレポートの重大さ、米の国防戦略体系などを極め
て分かりやすく解説している本章は必読です。

米の軍事戦略を理解する上で必須とされるNSS、QDR、国防報告、国家軍
事戦略、EASR、NDSの意味合いと関わりも、感動するほどすっきりと説
明されてます。


■実に不思議です

本著の目的は国防に関わる政府の公式見解を、事実を通じて正確に理解・把握
するという点にあります。国防政策理解のすべての基礎はそこにあります。
そして文面は、簡潔明瞭に事実と説明を短文で記載したものです。

この種の本は普通、読んでいて眠くなり「つまらないけど大切だからがんばっ
て読む」ところがあるものです。

でも本著からはそういう印象を受けません。
これは実に不思議です。

理由としてあげられるのは、わたしが思うに、
要所要所に差し込まれている<参考>の存在と、先ほどもあげましたが「海外
との比較」です。

特に、「海外との比較」は大きいように感じます。
一般国民が普通の生活をしている限り、海外の国防政策について知るところは
ほとんどありませんが、

たとえば、ドイツの非常事態法案(1968年)に関し、当時の西ドイツ政府
が国会に提出した「提案理由書」の一部、

<(前略)平時における国家組織が必然的に担っている鈍重性は、非常事態に
おいては国家存立の危険を招きかねない。(後略)>(P149)

といった言葉に出会うと、それだけで読む意欲がもりもり湧いてきませんか?

こういう体験を繰り返しできる知的興奮を伴う本なんですよね。


■注文があります。

教科書と名乗る以上、充実した索引をつけて欲しかったです。
索引で知りたい項目を見つけてとりあえずはそこのみ理解する、という読み方
ができる充実した内容だけに非常に残念です。

目次が充実しているから、という判断かもしれませんが、
充実した索引があれば、用語集としても使えたろうと感じます。
付録の法文をカットしてでもつけて欲しかったですね。

それと、ブックガイドもぜひつけて欲しかったですね。
次に進むべき書物が存在しないからかもしれませんが・・・。


■オススメです

「総合性(これ一冊で安心)」「分かりやすさ」「正確な歴史記述と国際性」

本著を読み終えて感じるのはこの三点です。

「戦後日本の国防政策を理解するための教科書」として自信を持ってお薦めで
きます。

国防政策という膨大な分野をここまですっきりとまとめあげ、ここまで分かり
やすく解説した一般国民対象の教科書が出たことは嬉しい限りです。
あなたには一家に一冊、是非お手元においてお読みいただきたいと存じます。

大学でも、一般教養の教科書として取り上げるべきと思います。


近く選挙が行なわれることになりそうです。
それまでに本著で国防政策の概念を頭に入れておくことは、
選挙後の我が国に、よい影響を与えるに違いありません。

春の休日、陽だまりの中でコーヒーカップを横において見ていただきたい本です。

今回ご紹介した本は

『教科書 日本の防衛政策』
田村重信・佐藤正久編著
芙蓉書房出版
2008年4月10日発行

でした。


(エンリケ航海王子)

以下目次です

はじめに(田村重信)

第1章 防衛の基本的な政策
 第1節 防衛省・自衛隊 発足の歴史とその組織
  1.敗戦と旧軍の解体
  2.警察予備隊と海上警備隊の発足
  3.警察予備隊・海上警備隊から保安隊、自衛隊へ
  4.防衛省・自衛隊の組織
 第2節 我が国の防衛政策の基本
  1.我が国の安全保障
  2.憲法と自衛権
  3.日米安保体制
 第3節 国際軍事情勢
  1.概観
  2.冷戦期の北東アジア地域の情勢
  3.冷戦後の北東アジア地域の情勢
 第4節 我が国の防衛政策に係る方針と防衛力整備
  1.前言
  2.防衛力整備の仕組み
  3.防衛力整備の経緯
  4.将来の防衛力整備の方向
  5.現在目標としている陸上・海上・航空自衛隊の体制
  6.統合運用
  7.防衛生産・技術基盤
 第5節 防衛予算の仕組み
  1.防衛予算の規模
  2.防衛予算の構成
  3.防衛予算の現状と課題
 第6節 情報と保全
  1.情報(インテリジェンス)の重要性と我が国の取り組み
  2.情報(狭義)
  3.保全

第2章 防衛の法的な枠組
 第1節 自衛隊の役割、任務と行動
  1.自衛隊の任務
  2.自衛隊の主な行動(活動)
  3.自衛隊の行動に係る武器使用権限等
  4.自衛隊の役割
 第2節 国際平和協力活動
  1.国際平和協力の意義
  2.国連の国際平和に係る取り組み
  3.我が国における国際平和協力の経緯
  4.国際平和協力法のしくみ
  5.自衛隊の部隊等による国連平和維持活動の実施状況
  6.我が国における国際平和協力の問題点と今後の課題
 第3節 周辺事態安全確保法等
  1.ガイドラインと周辺事態安全確保法等の関係
  2.周辺事態安全確保法等の概要
  3.ガイドラインの実効性を確保するためのその他の措置
 第4節 テロ対策特別措置法、補給支援特別措置法
  1.テロ対策特別措置法、及び補給支援特別措置法等に関する改正自衛隊
    法制定の経緯
  2.テロ対策特別措置法の概要
  3.補給支援特別措置法の概要
 第5節 事態対処(有事)関連法制
  1.有事法制の定義
  2.諸外国の非常事態法制・防衛態勢
  3.有事法制の研究から事態対処関連3法成立へ
  4.事態対処関連3法の概要
  5.事態対処法制関連7法及び3条約の概要
 第6節 イラク人道復興支援特別措置法
  1.イラク人道復興支援特別措置法の意義
  2.イラク人道復興支援特別措置法の概要
  3.イラク人道復興支援特別措置法に基く活動
  4.イラク人道復興支援特別措置法に係る今後の課題

第3章 新たな事態への対応、安定した安全保障環境の構築への貢献
 第1節 サイバー攻撃対処・生物兵器対処について
  1.サイバー攻撃対処
  2.生物兵器対処
 第2節 核兵器及び弾道ミサイルへの対応
  1.核兵器及び弾道ミサイルの拡散
  2.核兵器及び弾道ミサイルへの対応
  3.今後の課題
 第3節 軍事における革命(RMA)への対応
  1.RMAの概要
  2.過去のRMA
  3.現在のRMA
  4.RMAの基盤となる技術
  5.RMA化による戦い方の変化
  6.諸外国のRMAへの取り組み
  7.防衛省・自衛隊のRMAへの取り組み
  8.今後の課題
 第4節 安全保障対話・防衛交流
  1.安全保障対話・防衛交流とは
  2.アジア太平洋地域における安全保障対話・防衛交流の現状
  3.我が国が実施する安全保障対話・防衛交流
  4.今後の課題

第4章 日米安全保障同盟
 第1節 米国の国防政策
  1.全般
  2.米国の国防政策の変遷
  3.現在の米国の安全保障戦略等の体系
  4.ブッシュ政権における国防政策等
  5.米国の対日戦略(アーミテージ・レポート2)
  6.アジア太平洋地域における米軍の状況
 第2節 日米安保条約と日米防衛協力のための指針等
  1.日米安保体制の変遷
  2.日米安保体制の今日的意義
  3.日米の軍事的側面での協力(日米防衛協力のための指針)
  4.まとめ
 第3節 在日米軍基地の状況及び日米安保対背う2関する諸施策
  1.在日米軍の状況
  2.日米地位協定
  3.日米物品役務相互提供協定
  4.ホスト・ネーション・サポート
  5.沖縄に所在する在日米軍施設及び区域に関する諸施策
  6.日米同盟の将来に関する安全保障面での日米協議
  7・まとめ

別紙第1~第7

参考文献

おわりに(佐藤正久)

今回ご紹介した本は

『教科書 日本の防衛政策』
田村重信・佐藤正久編著
芙蓉書房出版
2008年4月10日発行


でした。

【080411配信 メールマガジン」「軍事情報」(本の紹介)より】

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(投稿日:2008年4月11日 18:58
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