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デビルドッグーアメリカ海兵隊日本人伍長のイラク戦記ー

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「デビルドッグ」ってなに?

おそらくあなたは、まず最初にそうお感じになるのではないでしょうか?

・・・・


答えはいちばん最後で。


■著者のこと

著者の越前谷さんは、わが陸自に入隊され、一空挺団に配属されその後退官。
渡米し、9・11テロの直後に米海兵隊へ入隊されました。

海兵隊では「アイス」のニックネームで歩兵部隊に配属。
イラク戦争初動時の2003年とファルージャ騒乱時の2005年の
二度にわたり派遣。現地で実戦を経験されています。

現地では、武士の証「旭日旗」を胸ポケットに入れ、
任務に当たっておられたそうです。

ちなみにニックネームの「アイス」ですが、
配属された中隊の軍曹のイメージで「日本人といえば冷静沈着な旧日本兵」と
思い浮かんだからつけられたそうです。

米海兵隊所属の日本人が本を出すのはこれが初めてです。


■理由は三つ

私は本著を五回読みました。
通常三読ほどでおわるのが平均ですが、本著の場合それをはるかに超えてい
ます。ここまで再読し、しんどさが残らない本は初めてのような気がします。

振り返ると、その理由は以下の三点に集約されるように感じます。

1.一介の平凡な若者が、カッコよさから軍人にあこがれ桁外れの夢を実現し
てゆく「ビルディングロマンス」としての楽しさ。

1.イラク戦で最前線の戦場を体験した日本人軍人の手になる、きわめて
貴重な、日本人向けイラク戦争の記録・報告である。


1.現在の米軍最前線の軍事用語や作戦の実情、武器評価、豆知識などを、
初心者にも「すらっ」と頭に入る形でうまく表現している。
また、あまり知るところのない海兵隊の姿が、内部からの視点で分かりやすく
面白く表現されている。現代軍事を知るうえで必読の軍事教科書。


こういう条件が揃った本は、珍しいです。


■少年は軍人を目指した

第一章から第二章では、
少年時代から陸自入隊、渡米、海兵隊入隊にいたるまでがかかれています。

小学生時代に本屋の店先にあったミリタリー雑誌で「ロイヤルマリーン」の特
集を見た著者は、<「外国にはこんな世界があるんだ!」日本にはない男たち
の世界を見てみたいという好奇心から、しだいに外国の軍隊に興味を持つよう
になっていった>んです。

中学から高校時代、ひたすら外国軍に入りたいと願う越前谷少年は、高校の先生
から思わぬ道があることを知らされます。そう、わが自衛隊の存在です。
話を聞いてわが自衛隊のことをいろいろ調べた少年は、高校卒業後、わが陸自
を志願。見事入隊を果たします。

その後の「教育隊での訓練の様子」「空挺志願のいきさつ」「専門職種に衛生
を選んだ理由」「渡米しての実際」など、くわしくは本でご覧下さい。

ひとことだけ申し上げておきたいことがあります。
越前谷さんは、結果としてわが自衛隊をやめて渡米したわけですが、
「わが自衛隊が厭になって」海外に出たわけではないということです。

まさかと思っていたグリーンカード取得が実現し、著者は
「自衛隊か海兵隊か」
最後の最後まで迷います。
その姿をぜひお読みいただきたいものです。

渡米してから海兵隊に入るきっかけが
「9・11テロ」
であったことも・・・・


■そしてブーツキャンプ

第三章から第四章では、
著者が、米海兵隊員になる過程が記されています。

米海兵隊では、入隊者はまず、ダイエットプログラムで有名になった「ブーツ
キャンプ」(新兵訓練所)に入ります。
そこでは「2等兵(プラーベート)」でなく「志願兵(リクルート)」と呼ば
れます。ブーツキャンプで繰り広げられる、凄まじいまでの訓練の模様は一読
の価値があります。本著の山場のひとつはこの第三章です。

鬼教官のイジメの数々を読むうちにあなたも、
思わず「このクソッタレ」と口をついて出てくることでしょう。

なかでも、51ページで紹介されている「クソまみれの志願兵」は、思わず笑
ってしまいますが、キャンプの雰囲気を実にうまく表わしています。

けれども、読み進めるにつれ、段々と素人のわれわれでもここで行なわれる
「キチガイじみた訓練」の意義が理解できるようになってきます。

最後の難関となる訓練が終了したとき、
主任ドリルインストラクターの軍曹は次のような言葉を告げます。

<「我ら海兵隊はどんな困難な状況に陥っても、海兵隊員であることを常に証
明し、その実力を惜しみなく発揮しなければならない。それができてはじめて
海兵隊のモットーである『センパーフィデリス(永遠の忠誠)』が成し遂げら
れる。お前らはもう少しでここを卒業する。ここからがお前らの人生の始まり
であり、出発である。忘れるな!>(P75)

そして卒業の日、担当インストラクターのスティール軍曹は

<「今日でお前らともお別れだ!
お前らは今日卒業を迎える。
ここでやってきたことはお前らにとって一生の宝になるであろう。
ここの訓練は、お前らにはキツく過酷なものであったかもしれない。
しかし、ここでしかできないアメリカ海兵隊の射撃手としての技を学び、
肉体的、精神的にも、海兵魂を胸に刻み込んだはずだ。
お前らは、これから先ずっと海兵隊員であることを忘れるな!」>(P77)

といいます。

著者は同軍曹から海兵隊徽章を授与される際、

<Echizenya, You did good job!(エチゼンヤ、よくやり通したな!)
You are, US Marine now!(これでお前も海兵隊員だぞ)
部隊に行ってもがんばれ!>(P78)

との言葉をもらいます。


<うれしかった。(中略)俺は胸がカーッと熱くなった>(同)

読んでいるこちらも、胸が熱くなりました。


つづく第四章では、海兵隊歩兵学校での52日間にわたる訓練の模様が描写さ
れています。

面白いのはたった三ヶ月のブーツキャンプでの訓練が、既に士気旺盛な海兵隊
員を生み出していたことです。83ページをご覧下さい。

不名誉除隊になるとどうなるか?など、興味深い解説もあります。

訓練3週目、ブッシュ大統領がイラクに対し宣戦を布告します。
そのとき海兵隊員はどう反応したか?ここは必読でしょう。

そしてついに訓練が完了します。

<入隊してから半年、ケガや体力不足、精神的な弱さでリタイヤするヤツも多
い中で、俺は日本人として最後までやり遂げることができた!思わずその場で
飛び跳ねたいほど俺は嬉しかった。>

読んでいる私も嬉しかったです。笑


■イラクの戦場で

第五章と第六章はイラク戦場からの報告です。
生活のこと、戦闘のこと、武器のこと、IEDのことなど、読むだけで勉強に
なることばかりです。(水を一日12リットル飲む、にはビックリしました!)

この2章はそれぞれが山場といえます。
このふたつを読むだけでも価値があります。

あわせて、
ブーツキャンプでの非情なまでの訓練が、実践の場で活かされていることがよ
くわかります。訓練⇒実戦という機会はそれほどあるものではなく、極めて貴
重な報告といえましょう。

また感じるのは、
わが国内で伝えられているイラク状況が、かなり歪んでいるということです。
その意味からもすべての国民に目を通して欲しい内容です。

歪んだ情報をいくら集めて判断を下しても、所詮は歪んだものしか出てきません。
せめてあなたには、軍人の手になる最前線戦場報告ともいえる本著を通じ、
そのゆがみを矯正いただきたいと思います。

砂漠での銃クリーニングの実際など、専門家の方にも有益な内容が満載です。

あわせて、治安戦の難しさを感じます。
専門家のみならず、われわれ一般人もこの難しさをよく理解する必要がある
と考えます。

■その他感じたことなど

1.本著には本当にたくさんの人が登場します。
米海兵隊員・越前谷儀仁を生み出すため、いかに多くの人の力・支えがあった
かということ、そしてその人たちに対する著者の感謝を感じます。

おそらく著者は、種々の経験を積む中で、人が支えあうことの大切さ・素晴ら
しさを骨身に沁みて知っておられる方と推察します。

書かれていることの凄まじさと、表紙や口絵で見る著者の表情の穏やかさに
ギャップを感じる人がいるかもしれません。その秘密はここにあるのではない
でしょうか? 制服姿の越前谷さんの表情は、それほどふくよかで穏やかです。


1.越前谷さんが名誉除隊される際の中隊長の言葉、

<海兵隊は常にお前の側にいるぞ。Once a Marine Always Marine(一度海兵
隊員になったら生涯海兵隊)だからな>

は、感動的です。

余談ですが、
カラテを修業していた若い頃、わが空挺団ご出身の先輩から、
「おれは空挺だから」ということばを何度も耳にしました。

おそらく先輩は「俺は空挺団の人間だ。無様な姿は見せられない」との誇り
をお持ちだったのだと思います。

本著を読んで、その意をますます強くしました。
厳しい訓練を行い、落伍者が多数出る組織で生き残った人同士の絆は、
外部の人間には到底理解できないほど深く・太いようです。

厳しい訓練で鍛えるのは、肉体ではなく魂なのでしょう。
より厳しい訓練からはより強靭な魂が生まれます。
そして、その魂を共有する仲間は、何よりも大切なのでしょうね。

(これを書いているうちに、尊敬する元自衛官各位から昨年末に頂き、
そのままになっている「あるメッセージ」のことを思い起こしました。
あなたにもお伝えしたいですね。後日メルマガでご案内します。)


1.越前谷さんは、日本を出てグリーンカードを取得して米にいかれた方です。
しかし本著を通じて感じるのは、氏がまぎれもない「日本武士」だということ
です。今の時代、日本人、武士であることと国籍や居住地はあまり関係ない
みたいです。

あわせて、
越前谷さんのような日本武士が、米軍内でわが国の誉れを発揮されることは、
日米同盟にも寄与するところ極めて大であると感じました。


■すべての方にお薦めします

内容は激しいです。しかし全編を通じて、いたずらな感傷に浸らない淡々
とした書き口で表現されています。

そのせいか、通読しての印象は

「爽やか」

のひとことです。


ご本人、そして編集者の爽やかさが図らずも顕れた作品といえるかもしれません。

並木書房さんは、故・三島瑞穂さん以来、米軍内の日本武士を発掘し、紹介さ
れてきたパイオニアです。わがマガジンでも以下の書籍を紹介しています。

軍曹!特殊部隊に入りたいッス』三島瑞穂(著)小峯隆生(聞き手)
第82空挺師団の日本人少尉』飯柴智亮(著)
名誉除隊』加藤喬(著)


今回も実に素晴らしい情報を、
求めやすい価格でわれわれ国民に提供くださいました。
感謝するばかりです。


1.一介の平凡な若者が、カッコよさから軍人にあこがれ桁外れの夢を実現し
てゆく「ビルディングロマンス」としての楽しさ。

1.イラク戦で最前線の戦場を体験した日本人軍人の手になる、きわめて
貴重な、日本人向けイラク戦争の記録・報告である。


1.現在の米軍最前線の軍事用語や作戦の実情、武器評価、豆知識などを、
初心者にも「すらっ」と頭に入る形でうまく表現している。
また、あまり知るところのない海兵隊の姿が、内部からの視点で分かりやすく
面白く表現されている。現代軍事を知るうえで必読の軍事教科書。


こういう条件が揃った本は、珍しいです。
本著はそういう本です。

すべての方にお薦めします。

今回ご紹介した本は

『デビルドッグーアメリカ海兵隊日本人伍長のイラク戦記ー』
越前谷儀仁
並木書房
2008/1/30発行

でした。

お求めは、

http://okigunnji.com/s/devildog/

もしくは、
お近くの書店でどうぞ。


最後になりましたが、越前谷さんの中隊では、
二百名のうち十三名の戦死者が出たそうです。(八十名が負傷)
わが盟邦の戦死者の鎮魂を祈ります。


(エンリケ航海王子)


■以下目次を紹介します。

序章 激戦の地ファルージャ
2回目のイラク派遣
最初の銃撃戦

第一章 陸上自衛隊に入隊
海兵隊のライフル・ドリル
「日本にも自衛隊があったんだ」
「空挺が俺を待っている!」
胸に輝く銀色の空挺徽章

第二章 アメリカ軍に入る夢
グリーンカードの抽選に当たった!
9・11テロの衝撃
サカモト先任軍曹との出会い
「もっとでかいことが起きるぞ」

第三章 地獄のブーツ・キャンプ
誰もが恐れる本物の鬼教官
仮入隊の5日間
命令違反の悪夢
3つの許可願い
11週間の新兵訓練が始まった
秒刻みのハードな訓練
空手の腕前を見せて大目玉
シャワー時間はたったの90秒
汚物まみれの小隊旗
完全武装での水泳訓練
ノース転地訓練場
射撃検定試験で1級
地獄の催涙ガス室訓練
最後の難関「クリスボー」
初めて見たデビルドッグの笑顔

第四章 52日間の歩兵訓練
アメリカでつかんだ確かな自分の居場所
「俺たちはもう志願兵ではない」
週末の誘惑
中隊一の力持ち、ロペス軍曹
「イラク開戦!」の緊急ニュース
実地射撃訓練と市街地訓練
SOI卒業「海兵魂を忘れるな!」

第五章 1回目のイラク派遣(バビロン)
猛暑の洗礼
イラク正規軍の一掃作戦
「キャンプ・バビロン」
サダム・フセインの城
市内パトロール中の銃撃戦
小便もらして命拾いしたイラク兵
最前線での生活
ヒトラーそっくりの上級曹長
海兵隊のデビルドッグ「コディー」
アリゲータープール
死体の運搬
キャメルスパイダーとの追いかけごっこ
武勲を称えた中隊のニックネーム
攻撃ヘリの誤射であやうく命拾い
20万ドルの現金輸送!
消えない戦場の高ぶり

第六章 2回目のイラク派遣(ファルージャ)
終わりが見えないイラク情勢
7ヶ月間のイラク派遣
「イラクってどんなところなんだ?」
「戦争がまた始まる・・・」
胸ポケットに収めた旭日旗
最前線のファルージャへ
IEDメーカーを探せ!
24時間態勢の歩哨任務
ジュンデ(イラク自衛軍)の教育
武装するシーア派住民
スナイパー狩り
2回目の派遣で改良された装備
突然、ハンビーが消えた!
最前線でのキャンプ生活
PMC(民間軍事会社)の影
「アイス、お前はサムライか?」
危機一髪だったIEDの爆発
感謝祭の生きた七面鳥
戦友たちの死
戦場のメリークリスマス
「俺たちは胸を張って歩けるよな」

第七章 名誉除隊
戦場の記憶が消えない
「海兵隊は常にお前の側にいる」

おわりに


今回ご紹介した本は

『デビルドッグーアメリカ海兵隊日本人伍長のイラク戦記ー』
越前谷儀仁
並木書房
2008/1/30発行

でした。

お求めは、

http://okigunnji.com/s/devildog/

もしくは、
お近くの書店でどうぞ。

次回もお楽しみに。


追伸

「デビルドッグ」ですが、本文中で数箇所、および著者のあとがきで意味が
書かれています。

あとがきから一部を抜粋しますと・・

<第1次大戦時の1918年、フランス軍と連合国軍が守備するベローウッド
を、ドイツ軍が数日間にわたって大攻勢をかけた結果、恐れをなしたフランス軍
は撤退したが、海兵隊はそこに踏みとどまって戦い、逆にドイツ軍を撃退した。
そのときドイツ軍が海兵隊のことを・・・・>

ここから先はぜひご自身でご確かめください。

http://okigunnji.com/s/echizenya_1/

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(投稿日:2008年3月14日 20:06
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