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国防の論点―日本人が知らない本当の国家危機

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わが政治家に、軍事を理解する知る人はほとんどいないようです。
その例外が、今回ご紹介する本の著者のひとり、石破茂代議士です。

この方ほど制服に信頼されている政治家を、私は他に知りません。
マスコミでさんざん叩かれるのは、そこに最大の理由があると感じます。

■さてこの本ですが・・・

防大卒業後(九期)任官。その後三十八歳で外務省に入省。情報畑を歩み、
現在は拓大海外事情研究所所長として、マスコミや言論の場でご活躍中の森本
敏さんが、国防に造詣を持つ代表的政治家ニ名と行なった対論を記録した本で
す。

話し言葉なので読みやすいのはもちろんです。
また、対論集ということもあり、
疑問点⇒解説⇒質問⇒より詳しい解説⇒問題点のあぶりだし、
というサイクルが、やさしく脳に染みいる読後感をもたらしてくれます。
気持ちいいですよ(笑)。

それ以上に気分気持ちいいのは、
お三方が、同じ問題意識を持って同じ土俵で語っておられるということです。
共通基盤を持つ人同士でないと議論は成立しない。と私は経験上確信してます
が、本著はその格好の成功例と思います。

同時に、
今の国家指導部でこういう話ができるのは、どれくらいいるのだろう?
こういう問いかけをして頭に浮かんだ顔ぶれはあまりに少なく、寒気を覚えた
次第です・・・


■現役政治家が・・・

この本で面白いなと思うのは、
現役政治家二人が退役将校と語り合っているという点です。

お一人は言うまでもない石破茂さんです。
1957年生まれ。鳥取県選出の衆議院議員です。国防のエキスパートとして
その名は高く、2002年から2004年まで防衛庁長官を勤めています。
わが陸自のイラク派遣時の長官で、長官在職中は、制服との交流を活発にもた
れ、交代するときにはあらゆる方面から慰留の声が出ました。

そしてもうお一方は民主党の長島昭久衆議院議員です。
慶大院卒業後米に留学され、CFR(「フォーリン・アフェアーズ」という米
政府の政策に重要な影響を与える雑誌を作っているシンクタンク。米外交問題
評議会)の上席研究員、帰国後、日本財団の主任研究員を経て2003年に衆
議院初当選。民主党の国防族議員としてすでに高名な方です。

確かに森本さんは、公的には40歳を前に制服を脱がれた方です。
しかし思うのですよ。森本さんの根っこは、防大卒業以来ずっと変わることの
ない「国防」にあるのではないか?と。

そう思う私は、
これまで森本さんを元外交官としてみたことは一度もありません。
あくまで退役軍人だと思っています。

森本さんが退役された事情はよく存じませんが、
現在のご活躍を拝見していると、
わが自衛隊もなかなかやるよな・・・と妄想する今日この頃です(?)

それにしても、
現役政治家が、制服出身者とおおっぴらに対談本を出せるようになった。
少し前までこんなこと、夢にも思えなかったですね。

これだけ見ても、時代の変化は急激に進んでいることが分かります・・・


■温度差

読んで感じたことは、
森本さんと現役政治家お二人との明白な温度差でした。

国防に関する政治の実態は、我々が想像する以上の「トンデモ」世界みたいで
す。森本さんなど「防衛当局が説明資料を持っていっても、それを読んで誰も
理解できない。資料の最後に別添している図表類もよく理解できない。基礎が
ないからです・・」と述べておられるほどです。

問題なのは、そういう状態で公人として話をすることなんですよね。
これは政治のみならず背広官僚でも同じことです。

そういえば、ある元幹部[退役将校]の方は「知ったかぶりする内局の連中の言
葉で、何度煮え湯を飲まされたことか・・」とおっしゃってましたね。

森本さんに比べて政治家のお二方は、「現行法」の枠内でしか話せない限界で
しょうか、分析は立派ですが、「で、どうするの?」という点でいまいち迫力
に欠けます。

もしかしたら、石破さんや長島さんは、ありとあらゆる方策を試した挙句、
すでにあきらめの境地におられるのかもしれませんね。
それならそれで、もっと怖いことですが・・・(苦笑)


■森本さんのこの言葉・・・

「ちょっと待ってください。それは、石破先生、長島先生のお二人ならいいで
すよ。ですが、それ以外の政治家なら誰一人でもだめですね。お二人以外の政
治家に交渉をやられるくらいなら、役人の方がまだましです。素人同然の見識
のない政治家に、日本を代表して日米交渉されたら、そのほうが怖いですよ」
(P110~111)

ここまでおっしゃってます。
ビックリする方も多いでしょう。
おそらく、ご経験を通じて出た森本さんのホンネだと思います。

こういう政治を作ったのは我々ですね。
国民の軍事への無知・無関心が、政治のこういう体たらくを生み出した元凶と
いえると思います。

ですから、国民レベルで軍事を理解・把握する必要が、いま求められているの
だと考えます。

政治は国民の鏡とよく言います。
私も、もっともっと軍事を身につけなければいけません(反省)

しかし一方で、この面について私は楽観視もしています。

わが国民(特にサイレントマジョリティ)は、大勢で極めて聡明です。
その聡明さは世界一といっても過言ではないと感じます。
どこかのお役人さんのように「国民のいうことは間違っている」とは思いませ
ん。

ネットで軍事を勉強する人も増え、それに比例して書籍の世界でも軍事は商業
ベースに乗りはじめていると聞きます。

こんな時代に、国防軍事を必死になって勉強しようとせず、お金儲けや票稼ぎ、
権益維持に奔走する政治家等は、いつでもクビにされる時代に入ったと思います
ね。


■出版社に注文を・・・

恒例の「注文」ですが(笑)、
PHPさん、なんでこんな地味な表紙にしたんですか???
茶色なんて・・・。落ち着きすぎで、あまりにジジむさすぎます。
カウンターに持っていくのが、少し恥ずかしかったですよ。(苦笑)

私が思うにこの本の主ターゲットは、30~50代の男性でしょう。
家で読むためにも、もう少しオシャレな表紙にして下さい!

それに、
はじめて見た時、頸草書房さんから出ている平松茂雄先生の本かと勘違いしま
したよ。論文集かな?と思いました。あまりに専門専門しすぎでは?(笑)

もっと派手で明るい演出が欲しかったですねえ。


いろいろ書きましたが、大変貴重な内容を、当事者がホンネで語っている、
記録としても価値あるほんとに素晴らしい本です。それでいて全ページ数が2
00ページに満たないコンパクトさも、おすすめできる大きな理由です。


以下、全目次です。


第一部 いま、なぜ米軍再編か 

  アメリカの一極支配はどう変化していくか
  台頭する中国、不安定化するアジア
  対テロ戦争に「終わり」はあるか
  「現実主義者VSネオコン」論争の結末
  二兎を追うアメリカ軍
  振り返れば、冷戦時代は「いい時代」だった
  「アメリカVS中国」という新・冷戦構造
  アメリカがイラク統治に失敗した理由
  封じられた米国務省の政策
  戦争の様相が同盟関係を変える
  イラクとアフガンとの違いはどこにあったのか
  法的議論と現実主義の狭間
  テロは戦争か、犯罪か
  日本政府がイラク戦争を「支持」した理由
  本当に正義の戦争だったのか
  英米法と大陸法のねじれ
  他に選択肢はなかった
  トランスフォーメーションとは何か
  技術革新が米軍を変える
  削られていた米軍予算
  ラムズフェルド・石破会談で語られたこと
  日本も防衛計画大綱の見直しが必要だ
  なぜ再編協議が遅れたのか
  防衛庁が対応できなかった事情
  事態を混乱させた日米のリーク
  
第二部 在日米軍・基地はどうなるのか

  結局、日米のどちらが得をしたのか
  ランド研究所報告が示していた再編の姿
  基盤的防衛力整備構想の転換へ
  結局、何も決まっていない
  交渉から外された防衛施設庁
  交渉できる政治家がいない
  日本版NSCは機能するか
  「負担の軽減」と「抑止力の維持」という二律背反
  メガフロートは実現できる
  座間に統合幕僚監部を
  協議を阻んだ「極東条項」
  どうなる、どうする普天間問題
  米空軍が拒否した事情
  軍事専門家は蚊帳の外
  嘉手納統合が実現しなかった理由
  米軍新型ヘリ配備の本当の狙い
  「台湾問題」は防衛論議のタブー?
  ローレス国防副次官の正論
  グアムを共同使用して、逆地位協定を
  
第三部 米軍再編で日米同盟や日本の防衛力はどうなる?

  いまアメリカ国防総省が関心を寄せていること
  日米関係は"大人の関係"になれるか
  集団的自衛権問題ーアメリカの見方とは
  安倍内閣が敷いた緘口令
  一般法はどうなるか
  沖縄県知事選挙の結果は
  掛け声倒れの「日米同盟重視」
  膨れ上がる再編の経費
  予算の裏づけがない、アメリカはイライラしている
  テレ朝「サンデープロジェクト」のデタラメ解説
  官邸も内閣官房も素人集団
  マンガのような防衛論議


(エンリケ航海王子)

今回ご紹介した本は


『国防の論点―日本人が知らない本当の国家危機』
 森本敏 石破茂 長島昭久(著)
 PHP

でした。


【070302配信 メールマガジン「軍事情報」(本の紹介)より】

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(投稿日:2007年3月 2日 14:22
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