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パラオ海底の英霊たち―記録写真集

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「パラオは第一次世界大戦後日本の委任統治領となり、太平洋上の重要な軍事
拠点のひとつとして整備が進められていき、ペリリュー島には「東洋最大」と
呼ばれる飛行場の建設も進められていった。

日本軍にとってパラオはグアムやサイパン攻略の後方支援基地として、米軍に
とってフィリピン奪還の拠点として注目され、米軍はチェスター・ニミッツ提
督の命令の下でパラオ攻略作戦を計画し、実行に移すこととなった。」

(ウィキペディアより)

ミクロネシアのパラオ共和国
と聞けば南洋の楽園、ダイビングを想像される人も多いかと思います。
ほんの半世紀少し前、我が国がその地で凄惨な死闘をしていたことを思い浮か
べる人の数は、これから減っていく一方でしょう。


■作者のこと

この写真集の作者、田中正文さんは、1959年生まれ。
戦没船内部など、最も危険とされる種類の水中撮影を行う戦跡写真家です。


著者からのメッセージを少し紹介します。

「世界の暖海を旅し、いわゆる「癒し」の海中風景を写真に切り取ることを主
な仕事としていたわたしが、一転して今、暗く濁った深い海底に潜り、そこに
眠る鋼鉄の英霊たちに光を当てる作業をライフワークとするようになったのは、
2002年5月、パラオ共和国の大統領Tommy E. Remengesau,Jr.氏と知己を
得たのがきっかけでした」


それまで10年に渡り、年に数回パラオの海を訪れていた田中氏は、「それな
りにパラオの海をよく知っていたつもり」でしたが、大統領夫妻とともに海に
潜ったときに見た風景が、これまでとはまったく違うことに気づきます。

「これはなんだ?」

田中氏は、大東亜戦争から半世紀以上経た、わが戦没艦船や航空機の残骸をこ
のときはじめて見たのです。そして、無残な形でいまもなお、海底に放置され
ていることを知ったのです。

パラオは、二十五年前に戦争遺物の海外持ち出しを禁止しています。
そのため、現在、5~60隻の船が周辺海域に眠っているとされます。
その大半は名も知れぬ船だそうです。

海中での船内撮影というのは難しい作業と聞きます。
田中氏によれば、沈没船の平均着底水深は三十五メートル強で、通常の水中タ
ンクでは五分程度しか船内に滞在できないそうです。

そのため同氏は、
長く深く潜れる「閉鎖循環式潜水器具」(英海軍が特殊潜水活動のために開発
した装置)を使用しておられます。
この種の器具を使う職業写真家は、我が国では少ないようです。


■危険な作業

沈没船内に入るのは、探査専門のダイバーですら「自殺行為」と言うほど危険
なものです。田中氏は、一回の作業で船内に滞在できるのは三十分が限界とい
っています。

そんな危険を冒してまで、なぜ田中氏は沈没艦船や航空機を撮影するのでしょ
う?

田中氏の言葉をお聞きください。

「わたしの作業を、英霊たちが望んでいるかどうかはわかりません。英霊たち
は今、静かな海底で多くの生き物たちに囲まれ、平和な眠りについているよう
にも映ります。実はもう、そっとしておいてほしいというのが、あるいは本心
かもしれません。しかし、現在の日本の繁栄と豊かさは紛れもなくこの方々の
犠牲によっています。犠牲という言葉が適切でないなら、今の我々の生活は、
祖国と家族を守らんとしたこの方々の勇気と愛、そして死の上に成り立ってい
ると言い換えてもよいのです。

ならばその事実と、この方々に対して抱くべき恩義や感謝の念を不朽のものと
すべく、今にも消えゆきそうな記憶を取り戻す試みをするのが、その死を無駄
にしないためにも、また、日本と日本国民の恒久平和のためにもわが義務と自
覚し、本書を作りました。」


■感想

通常の写真集とは違い、年表や戦跡地図もあります。
何も知らない人が手にしても、沈没している艦や航空機の姿を通じ、その背後
にある著者の思い、歴史的背景を謙虚に誠実に受け止め、思いを巡らせること
のできる構成となっています。

一般的にこの種の作品は、「お涙頂戴」か「特ダネ合戦」や「スペック合戦」
になりがちですが、これはまったく質が違います。
作者はじめ、関係する方々が、プロとしての任務を果たしきった姿勢がよ~く
伝わってきます。

その意味で本作品は、戦跡マニア向けの作品ではないと感じています。
マガジン読者のあなたにもぜひ目を通していただきたいものです。

なお、二十五年前に海外への戦争遺物持ち出しを禁じたパラオの大統領は、
本写真集の巻頭で「パラオは後世まで歴史的遺物を守ります」と明言しておら
れます。


■要望

内容、価格、構成などの面で不満に感じたことはありませんでした。

ただひとつ、書店での扱いにひとこと。
この写真集は、よく見ればわかるとおり、「歴史」「ダイビング」「カメラマ
ン」「写真集」に分類される内容で、ミリタリーに分類するのは必ずしも妥当
ではないと思います。

戦跡マニア本のコーナーに置くのもよいですが、他のコーナーでも取り扱いで
きるよう望みます。


ちなみに
田中氏は、今後、北海道、パプアニューギニア、ソロモン諸島の沈没艦船の写真
を撮りためる計画をお持ちです。


今回ご紹介した本は、

『パラオ海底の英霊たち―記録写真集』
田中 正文
並木書房
発売日: 2007/03

でした。

お求めは今すぐ!
 楽天ブックスもしくはアマゾンどうぞ GO!

(エンリケ航海王子)


以下、全目次です。

関係年表
パラオ諸島戦跡全図

第一章 大砲は火を噴かなかった ~パラオ中心部の守備~

 海軍通信施設
 マラカル砲台
 アルモノグイ砲台
 沿岸砲陣地
 特二式内火艇
 朝日村
 南洋神社燈篭
 零式艦上戦闘機52型
 監視哨
 洞窟の地底湖
 
 
第二章 帰還せず ~戦没航空機~

 零式艦上戦闘機
  ウルクターブル島沖
  ウルクターブル島南岸
  オロフシヤカル島沖
 零式水上偵察機
  アラカベサン島沖
  アイライ州沿岸ー1
  アイライ州沿岸ー2

 
第三章 3月30日 ~戦没艦船~

 明石
 あまつ丸
 石廊
 浦上丸
 神風丸
 吉備丸
 佐多
 忠洋丸
 てしお丸
 那岐山丸
 備中丸
 雷山丸
 隆興丸

第四章 名前のない船 ~戦没艦船~

 ブイ6レック
 ヘルメットレック
 大発動艇
 第1号輸送艦
 
第五章 英霊の影を求めて ~艦艇内への進入~

 てしお丸
 あまつ丸
 忠洋丸
 石廊

第六章 「サクラ、サクラ」 ~ペリリュー島、アンガウル島玉砕~

 千人壕
 ペリリュー島戦跡地図
 西浜(オレンジビーチ)
 ペリリュー飛行場
 零式艦上戦闘機52型
 海軍司令部
 大山の「短筒」
 九五式軽戦車
 洞窟陣地(最後の司令部)
 三十四会地下洞窟壕
 洞窟壕に鎮座する英霊
 米軍艦上攻撃機
 米軍M4戦車
 


あとがき

今回ご紹介した本は


『パラオ海底の英霊たち―記録写真集』
田中 正文
並木書房
発売日: 2007/03

でした。

お求めは今すぐ!
 楽天ブックスもしくはアマゾンどうぞ GO!

【070504配信 メールマガジン「軍事情報」(本の紹介)より】

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(投稿日:2007年5月 4日 14:05
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