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教育改革は自衛隊式で~教育のプロ集団・自衛隊~

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■あれがウチの子ですか?

入隊してから三ヶ月。教育終了式に参加した新人自衛官の父兄が一様に口にする言葉です。
なぜ自衛隊は人をここまで変える力を持っているのでしょう?

■そうなんです

人づくりはすべて「形から入れ」ということなんですよね。

軍隊に入隊すると自由がなくなるといわれます。
それはなぜなのか?

右も左もわからない新人は、規則に基いた行動を完全にできるよう励んでいる
うちに、さまざまなことに気づき始めます。

・自分ひとりでできることなど高が知れている
・手早く整理整頓できるようになったとき、自分の意識・行動が変化している
ことに気づく

などなど。

目に見えない自分の成長を、自らの手でつかませるためなんですね。
それがひいては、自力で立てる根性と頭脳を育むんです。

そのためにまず行うことが「形の強制」なんですね。
教育の第一歩です。

有名なのがベッドのシーツ張りです。
完璧な形ができるまで何度でもやり直しです。
マットを窓の外から投げ捨てられることもあると聞きます


■組織の一員

どんな人でも
社会に出ると組織の一員になるのが普通です。
どんな立場であっても、組織に属さない人はほとんどいないといえましょう。

組織である以上、トップの方針に従って部下が行動することは当たり前の話で
す。どの組織でも同じです。軍も例外ではありません。

トップの方針・意思を正確に把握し、外ではその方針・意思を反映した行動を
とること。それが組織にとって必要な人材です。軍も例外ではありません。

そういう人材をいかに多く抱えるか。
それが組織の存亡を決めます。

しかし時代を下るごとに、個人の意識は拡散の一途を辿り、ニートといった、
日本人の伝統では考えられもしなかった人が増えています。
人の質の変化に伴い社会人教育は難しくなっており、企業は苦労しています。

自衛隊に研修に行かせる企業が増えているのも理解できます。
わが自衛隊には、伝統に基く教育システムが完備・機能しているからです。


■平時の軍は教育機関

「教育の本質は心を育てることだが、特に軍隊はその使命の特性から、精神教
育を中心に据え、人づくりを重点にしている」と松島さんは述べています。

本著はわが自衛隊で行なわれている教育の実際、教官が部下にどういう思い
で接しているのかなど、実に具体的な話で満ちています。

特筆すべきは「しつけ指導」です。
これは、強制力を持つ軍組織の優位点といえるでしょう。

一昔前などは、「他にどこにも行くところがないから自衛隊にきた」という人
が多く、教育隊指揮官はいろいろ苦労されたと聞きます。
しかしわが自衛隊は、そういう「ダメダメ人間」を一人前の大人にしてきた実
績を持ちます。

その理由のひとつと思いますが、
特に重要だと思うのは、集団生活の中で極度にプライベートを制限される経験
を持つことです。

一般入隊してケツを割らなければ、最低二年間はほぼプライベートなしの世界
にいることになります。防大に入ったら、最低四年間はそうなります。

いまや、実の親でさえ子供のプライベートに入り込めない状態になっています。
子供の行動に責任を持たなければならない親が、責任を持てない状況になって
います。

その結果子供は、「自分だけが楽しけりゃあいい」「自分さえよければいい」
という誤った考えを正す機会もなく大人になっていきます。

しかし現代社会は、そんな人間に居場所を与えるほど余裕はありませんし、
甘くもありません。
彼らは、社会に出てから「お前はアホか?」とあちこちで頭を殴られ、どうし
たらよいかわからなくなって引きこもり・ニートに走ります。

あまりに不幸な話ではないでしょうか?

こういった人々の発生を抑止するには、わが自衛隊教育を教育の仕組みとして
取り入れるしかないのではないでしょうか。

自衛隊は軍隊ですから、他の組織と違って強制が行なえます。
しかしそれは同時に、強固な仲間意識を育むという面も持っているんです。

とはいえ、「軍隊教育の本質」のなかで松島退役陸将は現役時代を振り返り、
「物心がついてからずっと人と仲良くすることが良いことだと教えられ、乱暴
なことはしてはいけないと教えられた普通の善良な青少年に、これとは全く違
う規範で動く軍隊の行動を正しく理解させることは難しい」と、教育を行なう
側の苦労も垣間見せています。


■なんとも不思議な読後感

人を育てる話でもあり、
指揮官の話でもあり、
歴史を知るためのはなしであり、
現代軍事情勢を知る話でもあり、
自衛隊の話でもあり、
学校の話でもあります。

軍隊は「人の組織」です。
人は総合的な生き物ですよね。
この本には、それが正直に反映されています。
軍事が持つ本質的な総合性を顕しているともいえましょう。

また、
数回読み返してみて気づくのは、視点を変えてもそれぞれで何か得るところの
ある内容だ、ということです。

経営者の視点
新入隊員の視点
親の視点
指揮官の視点
国民の視点
軍事理解という視点
自衛官という視点
教育者の視点
自衛官の家族という視点
・・・

なかでも、指揮官の意思決定手順、必要な国際感覚などなど
自衛隊を「ヒト」の面から深く知りたい方にとっては必読といえましょう。


■最後に

本著は、自衛隊という教育のプロ集団から見た、戦後日本の人づくりに対する
疑念・提言、対処策としての自衛隊教育、を記した本でもあります。

教育という切り口から映し出されるわが自衛隊の全貌、そしてその教育の普遍
性を説く初めての啓蒙書といえます。

非常に薄いですが、中身は実に濃いです。

「人づくり」「自分の成長」
に関心があるすべての方に手にとって頂きたいです。

これだけ多面的で深い内容を持つのに千円でおつりが来る、
というのも、なんともありがたい限りです。


ゼヒお求め下さい。
オススメです。


今日ご紹介した本は

教育改革は自衛隊式で~教育のプロ集団・自衛隊~
 松島悠佐(著)
 内外出版
 発行 平成19年7月9日
 

でした。

【著者の紹介】
松島悠佐(退役陸将)
 1939年生まれ。61年防衛大学校卒(5期)。陸上自衛隊入隊。
 81年ドイツ連邦軍指揮大学留学、81年ドイツ連邦共和国防衛駐在官。
 88年陸上幕僚監部防衛部長。81年八師団長。93年中部方面総監。
 95年6月退役。

(エンリケ航海王子)

【071026配信 メールマガジン「軍事情報」(本の紹介)より】

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(投稿日:2007年10月26日 12:34
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