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防衛庁技官の機密漏洩疑惑について

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昨日のニュースで大々的に報じられ、現在進展中の標記の件について、ヨーソ
ロさまからいただいたご見解を紹介します。

【簡単な経緯(各種報道より)】

1.防衛庁技術研究本部の元技官が、第一研究所企画官として在職中の200
  0年2~3月にかけて、潜水艦に関する防衛庁の技術資料を外部に持ち出
  したとして、警視庁公安部がこの元技官の自宅などを家宅捜索し、元技官
  に対する事情聴取が行なわれていたことが2日、判明した。

1.持ち出されたのは、潜水艦の「対爆強度」=鋼板の強度などに関する資料
  で、事情聴取に対し元技官は、「資料は知人の元貿易会社社長の男性に渡
  したが秘密文書ではない」などと話している。

1.警視庁公安部は、元社長の男性が、これまで中国の軍事関係者と接触して
  いたことを確認しており、潜水艦を巡る情報が中国に流出していた可能性
  もあるとみて捜査を進めている。

1.元技官は1971年に防衛庁に入庁。潜水艦関連の研究を長年続け、02
  年に退職。現在は防衛関連企業に在籍し技術指導などを担当している。

1.資料を受け取ったとされる貿易会社元社長は、数年前まで中国や台湾と薬
  や食品関係の貿易を手掛けており何度も訪中。こうした過程で中国の軍事
  関係者らと知り合ったとみられる。

1.元社長は物品の納入業者として防衛庁にも出入りし、元技官とは約20年
  前からの知り合い。

【この事案はスパイ事件に発展するか?】

これはスパイ事件の可能性がありますね。
この"友人"がそれを自覚していたか否かは分かりませんが、可能性は大いに
あるでしょうね。持っていく方には身近に知っているような単なる技術資料で
も、未だ知られていない世界では涎の出るような貴重な情報であるわけです。

【潜水艦技術という特殊性】

業界の常識では全く問題のない情報提供が、「潜水艦」ということで特別クロ
ーズアップされている面はあるかも知れません。
潜水艦は建造も活動も秘密の部分が多いですし、潜水艦を自国で造れる国は世
界に約10ヶ国程度しかありません。その国の技術レベルの粋の結集を必要と
するからで、普通の造船所の技術ではどんなにしても潜水艦は造れません。
中国も韓国も四苦八苦して、鵜の目鷹の目で日本の技術を狙っているようです。

【潜水艦の技術】

潜水艦の内殻(耐圧船殻)に使う鋼鉄は超高張力鋼と呼ばれる特殊鋼で、加工、
特に溶接には特別の技術が要ります。
普通の鉄のように単純に溶接すると熱の加わった部分だけ特性が劣化し、耐圧
性能が低下してしまいます。
すぐお分かりのように、この特性は潜水艦の潜航可能深度に直結しています。
つまり、厚さ数センチもある高性能の特殊鋼材に高度な技術の加工を施さねば、
世界の第一線に伍した性能の潜水艦を造ることは出来ないのです。
これはちょうど、薄くて丈夫で錆びない鉄板が製造できる国しか世界で売れる
自動車が造れないのと同じです。

【技官について】

彼は「制服」自衛官ではありません。
「技官」は「事務官」の対語で、背広(文官)の技術系官僚を指します。

【技官の防諜意識】

技官が機密意識が一般幹部より低く、だから漏洩が発生したということはない
でしょう。民間企業でも技術者は自社技術の社外流出に対して強く警戒してい
ると思います。防衛庁の潜水艦担当技官も自分達が世界に冠たる技術を扱って
いるという自覚は充分にあると信じます。

【技官への軍事教育】

文官の初任教育について詳しいことは承知していませんが、防衛庁職員として
他の省庁より厳しい秘密事項を扱うための教育はなされていると思われます。

【公安と調査隊・警務隊】

想像ですが、公安警察は先にこの"社長"の身辺を洗っていて、「元技官」に
至ったのではないでしょうか。だからこの「元技官」が防衛庁に申告した時点
では、既に公安がガッチリ担当してしたと思われます。
自衛隊の調査隊は司法警察権がありませんし、警務隊の調査が警察と競合する
場合には、警務隊が手を引かざるを得ないことも多いようですね。

【日本の防諜意識】

日本がスパイ天国で、防衛庁のみならず、官公庁、政治家を含めて極めてルー
ズであるために公安関係者が常日頃歯がゆい思いをしていることは確かです。
したがって、国民への啓蒙・注意喚起のためにこの機会を活用していることは
想像に難くありません。
先日、米国の元大統領補佐官が機密ファイルの持ち出しで有罪になりましたが、
日本では地位の高い人が守秘義務違反に問われた例を知りません。
特に政治家がひどいです。

【IT化と防諜】

パソコンが普及して自宅でも職場と同じように仕事のできるようになる一方、
USBメモリのように簡単に大容量のファイルを取り出すことができる時代なの
で、毎日深夜に及ぶ残業をしている人達は自宅へ仕事を持ち帰りたくなります
よね。
ここに、秘密保全の危機が潜んでいます。
最近一部の企業で、パソコンを廃して昔のダム端末のような機器(キーボード
とディスプレイしかない)に戻す動きがありますね。フロッピーもUSBメモリも
一切使えないそうで、業務用ファイルの無断持ち出しを防いでいるようです。
これもやむを得ない時代の要請なのでしょう。

(ヨーソロ)

【050404配信 メールマガジン「軍事情報」より】

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(投稿日:2005年4月 4日 22:12
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